核反応に伴って{核エネルギー・原子爆弾・政治}

放出される核エネルギーが原子1個当り化学反応の数百万倍であるとしても、実用上有用なエネルギーとして取り出し可能となるためには、多くの原子に持続的に反応を行わせるような方法が発見されなければならない。

たとえば放射壊変のような核反応では、反応のおこる割合は確率的に定まっていて、外部から制御することは不可能である。

一般に核反応をおこさせるためには、外部から膨大なエネルギーを加える必要があり、したがって核反応を用いて実用的なエネルギーを取り出すことは不可能だと思われていた。

この状況は核分裂という予想外の現象の発見によって一変した。

核分裂は、ウランなどの重い原子核が中性子の衝撃を受けて、ほぼ質量の等しい二つの原子核に分裂する現象である。

たとえば次式のように分裂する。

この際放出されるエネルギーはラジウムのα崩壊の50倍程度であるが、重要なのは核分裂に伴って新たに2~3個の中性子を発生することである。

したがってこのように増倍された中性子を有効に利用するならば、次々にウラン原子核の核分裂を連鎖的に行わせることが可能となるであろう。

しかし実際にこれを行うには、いくつかの解決すべき問題があった。

最大の問題は、増倍された中性子が非分裂性の原子核に吸収されたり、外部へ散逸したりして連鎖反応が立ち消えになってしまうことや、逆に連鎖反応が急速に進みすぎぬように制御することである。

天然ウランには核分裂性のウラン235はわずか0.7%しか含まれておらず、残りの99.3%のウラン238は高速の中性子でなければ分裂せず、かえって中性子を吸収してしまうのである。

また核分裂の際に発生する中性子の速度は速すぎるために、ウラン235原子核と衝突する確率は小さい。

速度を熱エネルギー程度にまで遅くしたほうが核分裂はずっとおこりやすくなるのである。

こうして天然ウランよりウラン235の同位体濃度を高めた濃縮ウランや、重水や黒鉛などの減速材などが必要となる。

また連鎖反応を制御するためには、熱中性子を吸収しやすい原子核からなる制御材を系内に入れてやる必要が生ずる。

また、系全体の質量をある程度以上に大きくし、表面から逸出する中性子の割合を小さくしなければ連鎖反応は持続しない。

この最小必要質量を臨界量という。

以上は核連鎖反応を持続的に行う装置、つまり原子炉について述べたのであるが、原子爆弾の場合には高濃縮ウランあるいはプルトニウムを瞬間的に臨界質量以上に合体させることにより連鎖反応を急激に発生させ、巨大なエネルギーを放出させる。
update:2010年02月17日